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【CHA2号より:特集】 現代お米事情

2012年04月09日

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                            久保村喜代子 (2004年10月発行CHA2号より)

日本食とお米
収穫を迎えた田んぼで、赤とんぼが舞い、陽が沈むひと時、黄金色の輝きが忘れられません。マルコポーロが、『東方見聞録』に記した金色堂ではないでしょうか。日本食、そして回転ずしが世界の有名な都市でポピュラーになった現代、いったい本当に欧米人は、この愛すべき米の味を知っているでしょうか。
毎日食べても決して飽きることのない味をもつ主食穀物、米の存在を見直して欲しい昨今です。

お米と私たち
古来から稲は信仰の対象となり、日本に豊かな文化を育ててきました。米にまつわるさまざまな風習は、たくさんあります。
“ふリ米”:死を迎えそうになった人に、エネルギーを湧き立たせるように、竹筒へ米粒を入れ、枕もとで音を聞かせる。
“力餅”:スポーツ選手ではありませんが、力がつくといわれている餅。
子供が生まれた時の”産の飯”、”産立ち飯”"お食い初め”、初めての誕生日には餅をつき、赤子に背負わせたり、踏ませたりします。人生めでたく88歳を迎えると、私たちは”米寿”といい、感謝と尊敬をこめて祝います。また、穀物を量る時に使う升かきを贈る習慣もあります。亡くなった直後には”一杯飯”、”枕飯”を炊きます。私たち日本人の一生は、米と限りなく深いかかわりをもってきました。
お米の加工品は、もち米をついた”餅”、非常食にもなります。もち米と小豆を炊いた”赤飯”、お祝い事に供されてきました。
世界に広がりを続ける”すし”、体調を整えるためのダイエットに最適の”おかゆ”、お菓子の世界ではもち米から作られる”あられ、おかき、かきもち”、そしてうるち米から作られる”煎餅”、”清酒”と数多くあります。
現在の水田の基礎はおおよそ江戸時代からと言われます。全国の水田の貯水量は、44億トンで日本という降雨量の多い国で洪水を防ぎ、地理学上、環境上でさまざまな働きを示している最高の知恵の産物です。
雨の多い日本で、大量の雨が急激に流れても、水田の土砂はアゼでせき止められ、この土砂が流出して地すべりを起こすこともありません。
そして水田の水は、自然の節理に沿って、太陽の日を浴び蒸発、再び雨雲になり、雨が降り水田へ・・・一方では水田にためられている水は、絶えず地下水にしみ込み、およそ60%は川、40%は地下水となり、産業が発達した現在でも地下水のくみ上げによる地盤低下から保護する働きをしています。
古くから、人々は、絶対水平面を必需とする水田を作るための知恵やその水を管理する科学とそして、また、米による経済やしきたり事などを学んできました。

お米の風味
米穀商に生まれ育ち、愛する米への思いは格別。デンプンやさまざまなタンパク質、複合的な甘い風味は、郷愁と食欲とすべてのベクトルを合致したような気分をプレゼントしてくれます。何年か前の冷夏による米不足の年、海外からお米が一挙に輸入されましたが、おおかたの日本人は敏感にその違いを感じ取り日本のお米の素晴らしさが再認識されました。
おいしいお米を食べて、食欲を満たすには、私たちの感覚をすべて研ぎ澄ましてそのベクトルをキャッチしなければなりません。
「採れ立て炊きたて」に近づけるには、どうしたらよいのでしょうか。
他のさまざまな新鮮野菜のように「お米は生き物」という意識を持って欲しいのです。
いただく私たちがおいしさを感じるご飯の主な条件があります。色が白く、艶があり、粒の形が良い。噛む時ほとんど音がしない。甘いデンプンなどの複合的な米飯の風味がある。いくら噛んだとて、風味が変化せず、ほのかな甘味を感じるようでいて、無味に近い。そして温かく、ご飯粒が滑らかでスムーズ、柔らかく、粘りと弾力を感じることなどが挙げられます。
昨今コンビニ業界で使われる色飯、白飯でこの本来の無添加風味が再現されないのが残念です。賞味期限を考慮するといたし方ないのでしょうが、日本人として、毎日食べても飽きない米飯の究極の風味を体験して欲しいと思っています。

お米の主な成分は、水分、デンプン、タンパク質、脂質、ミネラルで、一定の数値でバランスよく配合されているお米がおいしいとされています。
一般的には、透き通っていて輝いて見えるのが良いとされていますが、精米技術の進歩した現在では、見た目で判別するのは不可能です。
さまざまな分析機器の発達で、お米のおいしさを表現し、数値化したものはありますが、データーがすべてではありません。各家庭における購入した後の保存状態や炊き方でおいしさは、必然的に異なってきます。一番大切なのは、自分で食べ比べてみることです。
同じ銘柄でも昨年の風味と比較して、今年産はどのように違っているか、状況によっても異なります。当然いただく人の体調も十分でなければ判断できません。自分の嗜好に合致する風味のお米を見つけることが大切です。そういった意味を考えれば、ブレンド米も理解できます。
たとえば、コーヒーのブルーマウンテンの風味を本当に知っている人はどのくらいいるでしょうか。お米はこうした嗜好品とは違って、毎日食べる主食の穀物であることを知って欲しいものです。
年間を通じて飽きのこない味わいと風味が求められます。香り、粘り、艶など米の持つさまざまな長所を兼ね合わせている品種は、単品で食べてもおいしくブレンドの必要はありません。しかし、おおかたのお米は「粘りはあるが、味は今ひとつ」とか、「味はいいけれど、粘りが足りない」など、何かが欠如しているような感覚が与えられるものです。そのため、風味の体系化、標準化をはかるため精米過程で3種類以上の米がブレンドされ、供給されています。

究極のご飯炊き
水加減、研ぎ方を正しく。朝出勤前にお米を研いで、夕方スイッチが自動的に入り、一定の蒸らし時間の後にご飯のおいしさは最高になります。
昨今の炊飯器は実に巧妙に開発されており、その手順を正確にこなせば、平均レベルに炊き上がることは保証されたようなもの。的確な浸漬時間、お米容量とお釜の大きさを考えてください。どんなにおいしく炊こうとしても、お釜に1/4ぐらいのお米分量では不可。炊き上がった米の量が3/4から4/5ぐらいになるサイズのお釜を選んでください。
そして、おいしさを独り占めしないように。炊飯器で炊き上がったご飯は、場所によって、おいしい部分があります。昔から「大息を入れる」と称して上から下まで一度にかき回します。すると湯気が一気に発散して、お米が立つ効果もあり、炊き方が甘かった時などは、いつもより念入りにかき回すと米が全体に馴染んできます。米をべ卜べトさせないように、しゃもじで力を入れずにさらっとかき回すことも肝要です。

お米と現代事情
飽食の徒と化した日本人。農産物自給率の中でお米だけ、かろうじて95%近くです。他は海外からの輸入が怒涛のように押し寄せて来ています。
穀物自給率も昭和35年には80%以上もあったものが今では30%以下。食べ物の供給熱量総合食料自給率も40%と低い状態です。さらに米飯用米類の消費量も年間80キロ。3食すべて米飯ではなく、さまざまな欧米化した食生活の変遷の影響を受けています。
米は、家計の消費支出に占める飲食費の割合であるエンゲル係数も高くはありません。しかし、通常の食生活の中から、ますます危機に瀕しています。何故でしょうか?
世界一の肥満大国のアメリカで、人々の好む脂肪の代替開発が進みました。
その際、あのまったりとした脂肪の風味と同じ味わいのデンプンが注目されました。そしてさまざまなダイエット理論が巷を賑わしています。日本のお米消費量の低下を止められないという現実とは逆です。

アメリカでは日本食のイメージとともにお米がダイエットとして、サラダ感覚で食べられています。カリフォルニアロールの、ほんのりした酸味は体に良いとされ、ニューヨークスタイルは、野菜とハーブ、スパイスで体に良いというイメージが定着して、人々の心を捉えています。不思議な事に欧米社会での米は、ただ今消費躍進中なのです。

著者:久保村喜代子
久保村食文化研究所を主宰し、海外の食品・食品素材会社に対し日本市場導入のテクニカルサポートしながら大手食品会社のコンサルタントとして活躍中

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